息子のまなざし ----★
監督は前回「ロゼッタ」でパルムドールをとった方。前作がちょっと辛かったので、今回も映画と私との間にワンクッション置くような間隔でみるつもりでしたが…これはそんな事できなかった。すっごい良かった。すっごい好きだ。こんな静かな、無音な感動が押し寄せる映画、久しぶりにみた…。言葉では説明できない。だってこの映画も、言葉で説明しようとしていないからね。観ればわかるんだ。ものすごく繊細な映画です。だから感情にストレートにつきつけてくるんですね、彼らのまなざしが。
オリヴィエと、謎の少年フランシス(って名前だったのか・笑)の関係が、気持ちが、氷が溶けてくような速度でゆっくりと分かってくる…その「間」がものすごい良かった。
オリヴィエはきっともっと憎める相手だったら、って思ったろうなあ。慎重に、繊細なものでも扱うように、少しずつ少しずつ、確かめるように会話を重ねていく。ちょっとした一言で、怒りの引き金を引くかもしれない…。現実を知っている相手のその言葉によって、落胆も、また怒ったりも、悲しみたくもない、けど知らないでいるわけにもいかない…。少年が「盗み」で少年院に居たってさらっと答えた時、どんな気持ちだったか。違う、違うだろ、それで済ます気か?お前そんな人間なのか?でもそうだったら良いとも思ったかもしれない。思いきり憎めたほうがよかったかもしれない。けど少年はとても真面目で、木工を勉強する子で、何も狂気じみたところがなくて。そして眠る。睡眠薬で。そうしないと、眠れないんだ。
主人公はオリヴィエだけど、でもきっと少年でもある。少年がどんな心境か、なんかすごくわかる。オリヴィエの正体を知らない。彼にとっては他人全部が敵と見えていたのかも。でも社会に溶け込まなきゃならない。普通にならなきゃならない。オリヴィエはいい人だ。こうしてきっと社会になじんでいける、とか思ってたかもしれない。 だから自分とオリヴィエとの関係がわかったとき、逃げた。その為に自分に近づいたんだ、って、絶対殺されると思った。でもオリヴィエはそんなつもりで事実を言ったわけじゃなかった。観てて分かった…オリヴィエは復讐する気で事実をつきつけたんじゃなかった。憎むべき相手を憎んでないんだ。殺そうとしてみた。けど手をかけた瞬間「違う」と思ったんだ。なんでだ、息子を殺されて、その犯人をねじ伏せて、殺せる、今、でも殺したいって気持ちなんてなかったんだ。そこにいるのは愛しい一人の人間だったから。殺されなかった。殺さなかった。そして、戻ってきた…

ああもう、最後まで、お互いの言葉がなかった。あのラスト、たまらないよ!!私はこの映画でパルムドールをとってほしかった…